ブックタイトルFのさかな30号 飛魚(とびうお) 2014年 冬

ページ
4/40

このページは fsakana30 の電子ブックに掲載されている4ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

日本のさかな文化を能登から発信するフリーマガジン

辰巳芳子の「いのちを育む食卓」第二段⑨いのちの塩シリーズ 塩、というとすぐ料理を思い浮かべるでしょうけれど、それよりももっと根源的な、私たちが生きていくうえで塩が欠かせないという事実を忘れてはなりません。 私は不思議なことにちゃんと母のお乳の味を覚えているのですが、おそらく四、五歳のころの記憶でしょうね、薄甘い、おいしくも何ともない味でした。人が一番先に経験する塩分というのは母乳でしょう。血液と同じ塩分がそのときのお乳の中に入っていたのです。 私たちの生命は母親のおなかの中で十月十日の間、羊水につかって育まれますが、この羊水を、生命が誕生した古代の海ととらえた人がいました。生命科学者の三木成夫先生です。先生はその海の水をいのちの水といい、塩をいのちの綱と表現しています。 私は料理の中でも仕込み仕事が好きで、四〇代のころは日本ではまだ誰も成功したことのない生ハム作りを始めたのですが、手探りで何百本という豚の脚を塩漬けにし、十五年ほど続けたとき突然悟ったのです。これまで営々と自分がやってきた仕込みものすべては、塩のことだったと。生ハムも、梅やらっきょうの季節の仕込み仕事も、普段の料理のさまざまなことすべてが、塩なくしては考えられないもの。自分の仕事が窓岩揚げ浜塩田Fのさかな Vol.30 4