ブックタイトルFのさかな30号 飛魚(とびうお) 2014年 冬

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概要

日本のさかな文化を能登から発信するフリーマガジン

 2010年に24歳で 日本酒業界最年少社長誕生 「最近、業界一若い社長じゃなくなった」という数馬嘉一郎社長は28才。石川県鳳珠郡能登町宇出津にある数馬酒造株式会社社長だ。「性格はまっすぐで負けず嫌い。裏返せば融通が利かないのかも」と仰る。あらゆることを吸収しようとする真っ直ぐな視線が印象的。 高校時代まで能登で過ごし、東京の大学で経営学を学ぶ。卒業後コンサルティング会社に就職。 30歳になったらITなどスタイリッシュな経営者になりたいと漠然と思っていたそうだが、24歳の2月に「そろそろウチを手伝わんか?」で、帰郷し、数馬酒造株式会社に入社。同年6月に代表取締役5代目蔵元に就任。先代から教わることもなく白紙の状態からスタートした。 社員は年上が多く経験も豊富。若い社長に交代して不安だったかもしれない。 就任後、先祖代々やって来た事を聞いて、自分なりの挑戦と変化で社内を変えようと思った。「失敗を恐れて、行動出来ない人間になるより、失敗を恐れず行動出来る人間でありたい」という。「経営は、関わる人全てを幸せにする仕組みである」を胸に抱いて日々邁進中。 「初めの1?2年は人に会い人脈作りに費やしました。人脈が広がると色々な方向が見えてきます。失敗もしますが、あまり記憶に残らない。ダメだと思ったらすぐに止めます。その決断は早いですね。でも失敗の理由は突き止めて繰り返さないようにします。」そんな数馬社長の姿勢に、社内の不安は徐々に解消し明るくなり信頼も出てきた。変化や挑戦に否定的ではなくなってきた。 コンサルティング会社勤務時代に理念が大事だと教わった。現実に経営者になってみて実感しているそうだ。「理念があるとブレないです。新しい事に挑戦するときや、判断や行動を決める時に必ず立ち返るようにしています。」 「先代の言葉で僕の人生の存在意義でもある会社の理念は、 心和らぐ清酒(さけ)造り 心華やぐ会社(いえ)作り 心豊かな能登(まち)創り迷った時は照らして判断する」とのこと。 数馬社長が目指す酒造りとは 「日本酒の飲み歩きはしますよ。全国、有名酒、営業先で、飲食店等で常にチェック。気になった酒は取り寄せて社員全員で飲み比べ評価します。売れている酒の味を直に確かめ全員で認識します。飲めなかった社員も飲めるようになってきました。女性目線の評価であったり、男性の意見で夏まで寝かせれば美味いかもしれないと聞くと取り置くこともします。そして新酒の1本目は社員全員で味見をして、どの商品を出すか決定しています。そうすると愛着も湧きます。」 数馬社長が目指す、「能登の風土を感じてもらえる酒」には、自社の杜氏や蔵人はもちろんのこと酒米生産者の協力も欠かせない。 取り組みのひとつに、〝100%能登産の酒造り?がある。東北大震災の影響などで酒米の入手が困難になったこともあるが、地元農家を巻き込んで共存共栄を目指すという強い思いがあったから。また、耕作放棄地の削減にもつなげたいため能登での酒米作りにこだわる。しかも数馬酒造の杜氏自ら酒米を作っている。品種は「能登産山田錦」と「石川門」。100%自社精米もこだわりの一つ。 酒造りに欠かせない材料の一つに「水」がある。緑濃い内陸地に湧き出る超軟水を使用する。「能登で育った米は能登の水と相性がいい」という。 昨年からもう一つ心強い見方ができた。米生産販売業を営む高校時代の同級生、裏 貴大さんが「五百万石」酒米作りを引き受けてくれた。絶対美味い酒米を作るぞ!と熱が入る裏さんと、その酒米を使った絶対美味しい能登の酒を作るぞ!の若社長同士がタッグを組んだ。もちろん田植えや稲刈りなどの農作業には数馬社長も手伝う。 その「五百万石」酒米作りに初挑上/命令調じゃない直筆の貼り紙が若社長らしい。中/照明が温かい色合いのショールーム。樽を使ったテーブルや椅子でくつろげるギャラリーも併設。下/杜氏自らが丹精した「能登産山田錦」を100%使った竹葉純米酒「能登純米」。Fのさかな Vol.30 24