ブックタイトルFのさかな30号 飛魚(とびうお) 2014年 冬

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概要

日本のさかな文化を能登から発信するフリーマガジン

んらくし)と呼ばれる産毛のような細い糸が生えています。 その生え方は卵の表面全体に生えていたり、部分的に生えていたりとトビウオの種類によっていろいろ。 ただ、どんな風に生えていてもこの糸の役割は同じで、卵と卵が絡まり合い、海藻や岩にくっつくことで、卵が傷ついたり、むやみに流されないようにしているのです。 この卵からは、だいたい2週間ほどで5㎜ほどの仔魚が孵化します。 彼らはやがて秋になると南へと移動し九州の南部で冬を越すのですが、翌年、夏を迎える頃、成熟したトビウオは命を繋ぐために北へと向かうのです。トビウオの生態 トビウオという名前は、この魚が大きな胸びれを広げて海の上を飛ぶことからですが、各地方で他にもいろんな呼び名がつけられており、九州や日本海側ではアゴ、関西ではトビ、フルセン、焼津ではマイオ、沖縄ではトゥブーと呼ばれます。 石川県でも主にアゴと呼びますが、カクトビやマルトビ、トンボと呼ぶ地域もあるそうです。 ちなみに、なぜトビウオをアゴと呼ぶのかは未だによくわかっていません。 1593年(文禄2年・豊臣秀吉の晩年)の文献にも「アゴ」との記述があるように、かなり古くからこう呼ばれていたのは確かです。 「顎が外れるほど美味しい」からアゴなんだという話がありますが、他にはトビウオの群れが仕掛けた網に頭から刺さって水揚げされることから、これを「網子(あみこ)」↓アゴと呼んだという説や、空(天)を飛ぶことから「天子(あまこ)」↓アゴになったという説などいろいろです。 また、ホントビウオの学名はCypselurusagoo agoo(サイプセルラス・アゴー・アゴー)といいますが、この「アゴー」は江戸時代に来日したドイツ人博物学者シーボルトが、この魚の長崎での方言として「アゴ」を紹介したことからこんな学名になりました。 さて、トビウオの仲間は世界で60種ほど、日本近海でも20種以上が知られており、日本近海で獲られる主なものにはトビウオ(ホントビウオ)、ハマトビウオ、ツクシトビウオ、ホソトビウオなどがあります。 関東では春に出回るハマトビウオなどを「春トビ」、夏に出回るものを「夏トビ(または本トビ)」と呼ぶことがあるそうです。 西日本や日本海側では、丸みを帯びた頭をしているホソトビウオを「丸アゴ」、やや角張った頭をしたツクシトビウオを「角アゴ」と呼びますが、太平洋側ではハマトビウオのことも「角トビ」と呼ぶことがあるそうです。 トビウオは海の表層近くに群れを作り、主に動物性プランクトンを食べています。 また回遊魚である彼らは、春から夏にかけて暖流にのって産卵のために南の海から北上します。 5?7月、トビウオは水深10?30mにある岩場の海藻に産卵します。 丸い卵の大きさは直径1・5㎜ほどで、約1万5千粒を産み落としますが、産卵を終えた親魚はここで命を終えてしまいます。 このトビウオの卵の表面には、纏絡糸(て写真提供=神戸市立須磨海浜水族園社会教育課・神戸市立須磨海浜水族園ボランティア http://kobesapv.wordpress.com/トビウオの仲間の幼魚。2㎝ほどしかない可愛らしい姿ですが、ちゃんと水面を飛び跳ねます。Fのさかな Vol.30 10